内省の時間が仕事にもプライベートにも効果的な理由
混乱と不安、素早い変化と今にも壊れそうな生活。こうした状況下でじっくりと自分自身や自分を取り巻く環境を振り返る時間を持つことは、決して贅沢なことではありません。心の健康や仕事の効率を維持するため必要な時間なのです。
ダンスフロアとバルコニー
ダンスフロアで踊っているとき、私たちは熱気の真っただ中に身を投じています。そこは魅力的で楽しい場所です。しかし、その場所にいるとき、私たちの感情は慌ただしく高ぶった状態にあります。私たちの日常生活も、これとよく似た状況にあるのではないでしょうか。その一方で、ダンスフロアを離れたバルコニーに行くと、落ち着いて周囲に意識を傾けることが出来ます。これは、コーヒータイムやティータイムの時間に似ています。
私が担当しているクライアントの多くは、「ダンスフロアを離れてバルコニーに出る」ことで、自分の感情をじっくりと見つめ直し、理解し、吸収することに成功しています。日常生活の中で「バルコニーの時間」を持つことを習慣化すれば、日常の些事から意識が離れ、状況を客観的に、俯瞰的に見つめることが出来るようになるでしょう。
「バルコニーの時間」がなぜ必要なのか
視野が広がる – 日々を忙しく過ごし、終わりの見えない「To Do リスト」に振り回されていると、「なぜその仕事をしなければならないのか」という本質部分を見失いがちになります。そうなると、視野が狭くなって細部にとらわれるようになり、私たちが本来の価値を発揮出来る分野がどこか見失った状態になってしまいます。しかし、バルコニーに出る時間を持つことが出来れば、頭の中がリフレッシュされて新しい視点が生まれ、これまでとは異なる観点で物事を見ることが出来るようになるのです。さらに、物事をより客観的に、クリエイティブな視点で考えることが出来るようになります。
思考が明確化する – SNSや騒音から一瞬でも気持ちを切り離すことで、私たちは落ち着きや平静な心を取り戻すことが出来ます。瞑想やマインドフルネス、一人になる時間を作って一息つくのも良いでしょう。また、一つのテーマについてじっくり考えることも、非常に大きな効果が期待出来ます。集中力を妨げるものや雑念から解放されると、思考が明確になり、具体的に物事を考えることが出来るようになります。思考が明確になれば、アイディアに形が生まれ、前に進むための道-例えそれが小さな一歩であっても、大掛かりでダイナミックなプロジェクトの始まりであっても、前進のための指針が見えてくるのです。
洞察力がつく – 腰を据えて考え抜いたり意思決定をしたりすることで、物事の理解が深まり、自分の考えや見解がまとまることがあります。他人ではなく、自分の考えや意見をまとめるために時間を使っているのだと感じることで、力が湧いて自由を感じ、その考えや意見、アイディアが自分自身のものになっているという自信が生まれるのです。さらに、現在順調に進んでいること、これまでは順調だったが現在は役立たなくなったことなどを確りと判別することで、止めるべきこと、続けるべきこと、始めるべきことを見極めることが出来るようにもなります。
私はビジネスを運営し、クライアントのために働く一方で、二人の男の子を持つ母親として子供たちの勉強の世話をし、その合間に家事をこなしています。こうした私自身の経験から、ロックダウン期間中に私が健康な心を維持できるか否かは、「バルコニーの時間」を持つかどうかで大きく変わってくることに気が付いたのです。私は、この時間をつくるために毎朝5時に起床し、自分の意見を俯瞰的に眺めて分かりやすく整理し、深く考えるようにしました。5時に起床出来なかった時には、週に一度20分から30分間、これを実行しました。すると、仕事や家庭などでの私の役割に、ベストな状態で臨めるようになったのです。現在はロックダウンも解除されましたが、私は引き続きこうした時間を持つようにしています。一人で川辺を散歩して電話にも対応せず、考えることに時間を使うのです。私は、一人で思索する時間を持つことで、アイディアをひらめいたり、人生における大きな決断をする際に役立ったことがあります。また、「今、ここにあるもの」に集中することが出来るようになりました。こうした時間は、私にエネルギーを与えてくれ、リフレッシュすることが出来ます。こうして次のチャレンジに向けて準備をすることが出来るのです。
ダンスフロアを離れ、バルコニーに向かうことも一つのスキルであると言えるでしょう。習得のためには練習が必要です。皆さんもぜひこうしたスキルを身に着けてみて下さい。。
この記事は、シミのウェブサイト「 Wellbeing Face」から転載したものです。